月別アーカイブ: 2007年12月

ガルブレイス わが人生を語る

J・K・ガルブレイス(著)「ガルブレイス わが人生を語る」(日本経済新聞社)
著名な経済学者であるガルブレイス(1908-2006)の回想。初出は日本経済新聞「私の履歴書」(2004年1月連載)です。
「ゆたかな社会」、「不確実性の時代」といった著書で知られるガルブレイスが、自らの人生と20世紀の様々な出来事との関わりを綴ったものです。
ガルブレイスはカナダの農家に生まれ育ち、農業大学で農業経済学を学び、カリフォルニア大学バークレイ校、ハーバードと進み、やがてケインズ理論と出会い、大きな影響を受けます。
その後、ルーズベルト大統領の元でニューディール政策に携わったり、ケネディ政権ではインド大使を務め、ジョンソン政権でも重要な役割を果たし、またフォーチュンでジャーナリストとして執筆を行ったりと、経済学者という範疇を超えて多面的な活躍をしてきたことがわかります。
本書の言葉を借りれば、 「社会科学は現実社会にどう役立つかで試されなければならない。」、この姿勢を自ら忠実に実践してきたのが、ガルブレイスの人生のように思われます。
淡々とした表現の中にもユーモアと、時代と社会に対する箴言を忘れないのがガルブレイスらしいところです。
「経済学者が書いた論文にはとりわけ難解なものが多いが、これはテーマが難しく深遠だからではない。十分にその問題を考え抜いたうえで書いていないことに根本的な原因がある。」
全編を通じて感じるのは、ガルブレイスが多彩で活動的な人生を送ってきたことです。彼の著書に擬えれば、「ゆたかな人生」といえるでしょう。
日本と日本人に対する心情もあふれています。

(2007)

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙

G.キングスレイ ウォード (著)「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」
カナダ生まれのビジネスマン、キングスレイ・ウォードが息子たちに宛てて書いた手紙を、出版社に請われて1冊の本にまとめ、出版したものです。
手紙を書くきっかけとなったのは、著者が2度の心臓手術を受け、命に限りがあることを悟ったこと。財産の相続や事業の所有権について考えるとともに、子供たちに自分が実業界で苦労して学んだ教訓を伝えたいとの思いから書かれたということです。
「人がこの世を去るときには、その人とともに、経験から学んだ大量の知識がむざむざと闇に吸い込まれてしまう。」
著者はそんな思いから、大学生活、生活の心得、実業界で生きて行くための様々な教訓、困難な事態への対処の仕方などを、自らの経験を引き合いに出しながら、具体的に語っています。
手紙は子息が17歳の時に書き始められ、それから約20年間、会社を譲り渡す時まで書き続けられることになります。
全体を通じて強調されているのは、常に誠実であること、学習すること、勤勉に働くことによって成功がもたらされるということです。貪欲さへの戒めも語られています。
おそらく日本では、このような手紙が書かれることは少ないと思われます。
家訓などが代々伝えられる例はありますが、父親が子供に向けて経営の実務について、また人生全般について語りかける機会もあまりないでしょう。
活力を失わず持続的に成長する社会は、このような人生の智慧を継承することによってもたらされるのかもしれません。
30通目の手紙は、次の一文で締めくくられています。父親の愛情を集約した言葉です。
「わたしは霊魂の再来を信じないが、もし彼の地でそういうことがあるとわかったら、君の息子として送り返して欲しいと願うだろう。君の父親であったおかげで、すばらしい人生だった。(わたしの墓石にそう刻んでくれてもいい)。愛をこめて。 父さんより」
本書以外にも、「ビジネスマン、生涯の過し方」という著書があり、こちらは人間味溢れたビジネスマンのドラマとして楽しむことができます。

(2007)