話し方入門

D.カーネギー(著),市野 安雄(訳)「話し方入門」

自己啓発本としてあまりにも有名な「道は開ける」、「人を動かす」の著者であるデール・カーネギーの原点ともいうべき著作です。
話し方教室の講師であったカーネギーは1926年に”Public Speaking and Influencing Men in Business”を著していますが、それを編纂し直したものが本書です。
カーネギーは、良い話し手になるための秘訣として次のような要素をあげています。
・勇気と自身を養うこと
・周到に準備すること
・有名演説家に学ぶこと
・わかりやすく話す
・聴衆に興味を起こさせる
・言葉づかいを改善する
他にも、態度と人柄について、スピーチの始め方・終わり方などについて、具体的にどのように行動すればよいのかが説かれています。
「自分の個性を最大限生かしたいと思うなら、しっかり休養してから聴衆の前に現れましょう。疲れた話し手には人を引きつける力も魅力もありません。」(第7章 話し手の態度と人柄 より)
本書でカーネギーが述べている内容は、ほとんどそのまま現代でも通用するものです。
プレゼンテーションにおいても、「話し方」が聞き手に最も大きな印象を与えます。
話し方を学ぶことに抵抗を感じる人が多いようですが、ひとつの技術、技能として学びたいものです。

カーネギー話し方入門 (文庫版  Kindle版)

「道は開ける」

デール・カーネギー(著),香山 晶 (訳) 「道は開ける」( 創元社)
聖書に次ぐミリオンセラーとも称される、デール・カーネギー(1888-1955)の代表作です。
おそらくほとんどの書店や図書館に備えられており、自己啓発の古典的名著といって良いでしょう。
本書のテーマは、著者自ら語っているように、「悩み」とその克服方法です。
大きな図書館に行っても、寄生虫に関する本は多数見つかるのに、人間の悩みを主題とした書籍はほとんど見つからなかったという経験と、話し方教室で教えるなかで多くの悩める人に出会ったというカーネギーの経験が、本書執筆のきっかけとなっています。
トラックのセールスマンとして働き、ゴキブリが住む部屋で偏頭痛を抱えて暮らしていたカーネギーが、卑屈な気持ちをいかにして克服し、その後どのように行動し、自分でも信じられないほどの成功を収めることができたのか、彼自身の生き方も興味深く読めます。
「今日一日の区切りで生きること」、
「悩みに歯止めをつけること」、
「批判を気にしないこと」、
「信仰心を持つこと」などが、
悩みに満ちた人生から開放される鍵とのこと。 本書に登場するのは、すべて現実に生きた人物です。
例えば、金の亡者のような人生を送ってきたロックフェラーが、人生半ばにしてすっかり老いて疲弊した自分の姿に気づき、その後の人生を転換して人と社会への奉仕に生き、長寿を全うしたこと、このようなエピソードが数多く紹介されています。
突然の病気、事故、肉親の死、経済的破滅、これらの悲惨な境遇から立ち上がった多くの人の生き方に触れるたびに、前向きな気持ちが沸いてきます。

人を動かす

デール・カーネギー (著),山口 博(訳)「人を動かす」(単行本)

デール・カーネギーの著書はこれで3冊目の紹介で、「道は開ける」とともにミリオンセラーを続けている代表作です。

「人を動かす」という書名には、処世術を説くハウ・ツー本のような響きを感じますが、内容はカーネギーの他の著作と同じように、数多くの人間研究から生まれた奥深いものです。ちなみに原題は、”How to Win Friends and Influence People” です。

内容は、人を動かす三原則、人に好かれる六原則、人を説得する十二原則、人を変える九原則という構成になっており、その一部を紹介すると次のようなものです。

「人を動かす三原則」

●原則1 批判も非難もしない。苦情もいわない。

●原則2 率直で、誠実な評価を与える。

・・・

「人に好かれる六原則」

●原則1 誠実な関心を寄せる。

●原則2 笑顔で接する。

・・・

「人を説得する十二原則」

●原則1 議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける。

●原則2 相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない。

●原則3 自分の誤りをただちにこころよく認める。

・・・

「人を変える九原則」

●原則1 まずほめる。

●原則2 遠まわしに注意を与える。

●原則3 まず自分の誤りを話した後、注意を与える。

カーネギーが伝えたかったメッセージは、相手の人間性を尊重し、誠実に相対することがもっとも重要で、その姿勢が人を動かすということでしょう。

巻末には「幸福な家庭を作る七原則」が付されています。

カーネギーの他の著作とともに、座右に置いて読み返したい名著です。

(2007年12月13日)