経営戦略,マーケティング,IT活用のトータルコンサルタント アオヌマ経営情報研究所 青沼泰彦
経営用語集【中小企業のICT活用】
中小企業のICT活用
ICT活用については、一般的に大企業が先行し、中小企業においてはなかなか進まない状況にある.
中小企業でICT活用が進まない主な要因
- 経営戦略があいまい
自社のビジョン・戦略・経営方針があいまいなため,どこからICTに着手すべきかがわからない.
- ICTに対する認識が不十分
企業規模や業種にもよるが、ICTに対する認識や、リテラシー(理解力・活用力)に差がある
- 専門知識を有する人材の不足
情報システムの企画・提案,構築,維持管理,教育等ができる人材が不足している.
中小企業では情報システムの専任者をおくことが難しく,兼務になりがちで負担が大きい.
情報システムの維持管理という職能が,適正に評価されていない.
- 自社適合のシステム構築が難しい
自社業務に合ったシステムがなかなか見いだせない.
社内でシステムを開発できる人材がいない.
外部委託開発の場合には,自社の要求仕様を正確に伝えることが難しい.
- 導入・維持管理コストの負担
コンピュータや周辺機器は以前より安価になったが,保守・運用も含めると多額の費用がかかる.
- システム運用ルールがあいまい
基本的な操作から情報共有やセキュリティ管理まで、明確なルールなしに運用している例が多い.
中小企業のICT化推進のポイント
以上のような問題は,中小企業の経営資源の制約によるところが大きい.
中小企業の特性を活かしてICT化を進めるためには,次のような視点が重要である.
- 経営戦略との整合性をはかる
まず経営戦略を明確にすることが重要.
「新製品開発」,「業務効率化」,「販路開拓」,「顧客満足度向上」など,重点的に取り組むべきテーマを絞ると,必要なICTが見えてくる
- トップのリーダーシップが不可欠
トップがICTの重要性を正しく理解し,自ら先頭に立って進めること.
特定の人や部門任せにせず,ICT化の範囲・規模・予算・時期等の経営判断を行う.
部門間の利害を超えて全体最適を図ることは,トップの役割である.
- 自社の「強み」を生かす
自社の技術・ノウハウや独自の工夫を付加することで差別化をはかる
- 業務に合ったシステムを構築・導入する
現場業務への適合性が重要.
業務の標準化を進め,属人的な業務は最小限に留めるなど,業務改善・改革活動との同時進行が必要.
パッケージソフト導入や,クラウド・コンピューティング利用により,固有の業務プロセスを見直す機会にもなる.
外部に開発を委託する場合は,自社の要求仕様を正しく伝えること(「提案依頼書[RFP]の活用)
※RFP見本(ITコーディネータ協会)
- 取引先との連携
システム構築に当たり,取引先から技術・ノウハウの提供を受ける.
データ交換を行う場合,データ形式やネットワーク構成について十分な検討を行う.
- 社員教育を計画的に実施する
ITリテラシーの底上げを図ることが全社的なレベル向上につながる.
計画的,体系的な教育訓練を行う.
- 適正規模の情報化投資
企業規模,業種特性,売上・利益,重点戦略に見合った投資を行う.
ハードウェア・ソフトウェアに対する初期投資だけではなく,保守管理費用などのランニングコストも予算化する.
※業種別のICT投資
- 補助金の活用
ICT導入にあたり活用できる補助金・助成制度を活用する.
例)
・「IT導入補助金」(サービス等生産性向上IT導入支援事業)
・「小規模事業者持続化補助金」
- 情報セキュリティへの配慮
テレワーク導入などに伴い,中小企業においても情報セキュリティ対策に取り組むことが不可欠となっている.
セキュリティ情報を収集し,基本的な対策を実施する.
・内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)
・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
・「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」