生物と無生物のあいだ

福岡 伸一 (著)「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)

分子生物学という、最先端の科学のおもしろさを伝えてくれる本です。
テーマは、生命とは何か、生物を無生物から区別するものは何かということです。
著者は、「生命とは自己複製を行うシステム」という通説に満足せず、動的平衡論という視点から生命の本質に接近します。

プロローグの文章を読んだだけで、著者の豊かな感性や人間性がうかがわれ、一般の科学書とは異なる詩的な雰囲気が伝わってきます。

「川面を吹き渡ってくる風を心地よく感じながら、陽光の反射をかわして水のなかを覗き込むと、そこには実にさまざまな生命が息づいていることを知る。水面から突き出た小さな三角形の石に見えたものが亀の鼻先だったり、流れにたゆたう糸くずと思えたものが稚魚の群れだったり、あるいは水草に絡まった塵芥と映ったものが、トンボのヤゴであったりする」(プロローグ より)

著者は、DNAの自己複製の仕組みをわかりやすく説明したかと思うと、研究者の姿を活写し、そこに自らの研究生活を重ねて語るというように、読者をさまざまな世界に連れていきます。

あたかもDNAの二重らせん構造のように、分子生物学の解説と研究者の人物伝が美しく重なり合います。
このような変化に富んだ展開により、最先端の科学を扱いながらも、読者を飽きさせずに引き込む効果をあげていると思います。
時間の経つのを忘れて一気に読まされてしまう本です。

(2008年1月17日)