ガルブレイス わが人生を語る

J・K・ガルブレイス(著)「ガルブレイス わが人生を語る」(日本経済新聞社)
著名な経済学者であるガルブレイス(1908-2006)の回想。初出は日本経済新聞「私の履歴書」(2004年1月連載)です。
「ゆたかな社会」、「不確実性の時代」といった著書で知られるガルブレイスが、自らの人生と20世紀の様々な出来事との関わりを綴ったものです。
ガルブレイスはカナダの農家に生まれ育ち、農業大学で農業経済学を学び、カリフォルニア大学バークレイ校、ハーバードと進み、やがてケインズ理論と出会い、大きな影響を受けます。
その後、ルーズベルト大統領の元でニューディール政策に携わったり、ケネディ政権ではインド大使を務め、ジョンソン政権でも重要な役割を果たし、またフォーチュンでジャーナリストとして執筆を行ったりと、経済学者という範疇を超えて多面的な活躍をしてきたことがわかります。
本書の言葉を借りれば、 「社会科学は現実社会にどう役立つかで試されなければならない。」、この姿勢を自ら忠実に実践してきたのが、ガルブレイスの人生のように思われます。
淡々とした表現の中にもユーモアと、時代と社会に対する箴言を忘れないのがガルブレイスらしいところです。
「経済学者が書いた論文にはとりわけ難解なものが多いが、これはテーマが難しく深遠だからではない。十分にその問題を考え抜いたうえで書いていないことに根本的な原因がある。」
全編を通じて感じるのは、ガルブレイスが多彩で活動的な人生を送ってきたことです。彼の著書に擬えれば、「ゆたかな人生」といえるでしょう。
日本と日本人に対する心情もあふれています。
(2007)