ゲーテ (著) 高橋 健二 (訳) 新潮文庫
ゲーテ(1749-1832)の智慧を凝縮した一冊です。
初版の1952年から現在でも版を重ねており、学生時代に購入した文庫本は1973(昭和48)年発行のもので、その後処分されることもなく現在も書棚の片隅に納まっています。
当時は就寝前にページをめくってわかったような気がして読んでいましたが、おそらく地上から星を眺めているようなものだったと思います。
内容は、「ファウスト」や「若きウェルテルの悩み」、「詩と真実」、エッカーマンの「ゲーテとの対話」、その他多くの著作から格言や箴言を集めたもので、次の分類にしたがって纏められています。
「愛と女性について」、「人間と人間性について」、「科学、自然、二元性について」、「神、信仰、運命について」 、「行動について」、「芸術と文学について」、「幸福について」、「自我と自由と節度について」、「個人と社会について」、「人生について」、「経験の教え」、「人生の憂鬱」、「身辺雑記」、「生活の知恵」
ゲーテを特徴付けているのは、このような知的領域の幅広さがそのまま彼の人生になっていることです。
詩人・文学者、自然科学者にして、政治にも携わるなど、様々な分野で大きな業績を残しており、万能の天才という評価もあります(1)。
また、積極的な活動を促したかと思うと、一方では沈思することも勧めており、多様性に富んだ思想の持ち主であることがわかります。
ゲーテの生きた時代は、フランス革命とナポレオンがヨーロッパを席巻した激動の時代であり、社会・文化においても大きな転換期でした。 この時代を生きた人々が、心理的にも大きな混乱のなかにあったことは想像に難くありません。
現代はゲーテの生きた時代と同様の、あるいはそれ以上の大きな変革の渦中にあります。日々の生活に翻弄され人生の全体像を見失ったとき、ゲーテの格言はいくつかの道を示してくれます。 心に残る言葉が見つかることと思います。
(1)ゲーテの伝記は多々ありますが、小栗 浩 (著)「人間ゲーテ(岩波新書)」は、幼少時の教育、女性とのかかわり、代表作ファウストなどについて生き生きと描写されており、読みやすくお薦めできます。
高橋 健二(訳)「ゲーテ格言集」新潮文庫