寺島実郎 (著)「二十世紀から何を学ぶか(下)一九〇〇年への旅 アメリカの世紀、アジアの自尊」(新潮選書)
「二十世紀から何を学ぶか(上) 欧州と出会った若き日本」の続編で、さまざまな人物を軸にして、二十世紀のアメリカ、アジア、日本の関わりを描いた「歴史エッセイ」です。
冒頭で、本書の執筆動機と著者の歴史認識に対する基本的な態度が表明されています。
「漠然としたイメージや受け身の情報に基づいて歴史を受け止めるのではなく、『実事求是』の精神で、自らの足と眼を使って、歴史の現場に立ち、文献と資料によって事実を確認し、『自分にとっての二十世紀の総括』を試みたものである」(はじめに より)
今回登場するのは、クラーク博士、ヘンリー・ルース、フランクリン・ルーズベルト、マッカサー、新渡戸稲造、内村鑑三、鈴木大拙、津田梅子、野口英世、ガンディー、孫文、魯迅、周恩来など、多彩な人物です。これらの人物が二十世紀をいかに生き、歴史にどのような影響を及ぼしたのか、興味深く綴られています。
歴史を前にすれば、個人の存在や影響力はたかが知れているように思われます。
しかし、これらの人々の果たした役割の大きさを知ると、決して個人は無力ではないという感慨が湧いてきます。
テレビ番組などで解説者として活躍する寺島氏は、その誠実な姿勢、論理的で説得力がありしかも分かりやすい論評が印象的ですが、本書からも同じような読後感を覚えます。
そして、基礎的な資料を自分の目で十分に読み込み、自分の頭でよく考えたうえで、話したり書いたりする態度が重要であることを教えてくれます。
上巻では巻末に膨大な参考文献リストが付いていましたが、下巻ではWebで公開する形となっています(http://www.shinchosha.co.jp/book/603582/)。今回もその膨大さに圧倒されます。
二十世紀から何を学ぶか〈下〉一九〇〇年への旅アメリカの世紀、アジアの自尊 (新潮選書 単行本 – 2007/5/1)