企業戦略論【上】

J・B・バーニー(著),岡田 正大(訳)「企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続」(単行本)

MBAのテキストとしてかかれたもので、原題の”GAINING AND SUSTAINIG COMPETITIVE ADVANTAGE “が示すように、競争優位性の獲得と維持がテーマです。邦訳は原著を上・中・下に分けた3巻構成となっています。
著者のJ・B・バーニーは、RBV(1)の第一人者で、大手企業の戦略コンサルティングを行い、また在職した3つの大学で計5度の「ティーチング・アウォード」を受賞しているとのことです。 本書の内容は、経営戦略の定義(「ミッションと目標を達成するための手段」)から始まり、SCP(2)モデルとSWOTフレームワークに基づく脅威・機会、強み・弱みといった事項の体系的な解説が続き、RBV、VRIOフレームワーク(3)に展開されています。 SWOT分析はバランス・スコア・カードによる戦略策定でも必須のプロセスですが、機会・脅威・強み・弱みの項目を抽出するのはなかなか骨の折れる作業です。 本書ではM.E.ポーターの理論に拠り、脅威の項で「新規参入・競合・代替品・供給者・購入者」という5要素の詳しい解説がなされ、機会の項では「市場分散型業界・新興業界・成熟業界・衰退業界・国際業界」といった業界特性別に、着目すべき機会について述べられています。 これらの着眼点を理解することにより、SWOT分析の質が向上することは容易に想像できます。 講義を念頭においているためか、重要な事項については何度も繰り返し、企業の例やモデルを示しながら説明されています。 体系的で網羅的な論理展開、平易な文体とわかりやすい表現で記述された優れたテキストです。 上巻は300ページほどの分量ですが、経営学の専門書としては異例に読みやすく理解しやすい本です。 中・下巻の内容については後日紹介したいと思います。

(1)RBV(resource-based view)・・・経営資源に基づく視点。企業の競争優位の源泉として、内部資源に注目する経営戦略理論。
(2)SCP(structure,conduct,performance)・・・業界構造-企業行動-パフォーマンスの関係を理解する方法論。
(3)VRIO(value,rarity,inimitability,organization)・・・価値、稀少性、模倣困難性、組織についての問いからなるフレームワーク。

[新版]企業戦略論【上】基本編 戦略経営と競争優位 (単行本 – 2021/12/8)