ビル・ゲイツ (著), 西 和彦 (訳)「ビル・ゲイツ未来を語る」(アスキー – 1995/12/1)
インターネット社会が離陸した時代に、ビル・ゲイツ(1955-)が何を考え、どのような未来予測をたて、マイクロソフト社(1975-)がどこに進もうとしていたのかを知ることができる本です。
本書出版から四半世紀を経過した現在、ビル・ゲイツの展望の多くは現実のものとなり、情報化社会のたどってきた方向も予測に合致していることがわかります。
本書が書かれた時期は、ちょうどマイクロソフト社にとって分水嶺となった時期でした。
90年代初め、マイクロソフトはインターネットの影響を過小評価しており、独自のパソコン通信サービス(MSN)を提供していました。またブラウザの開発でネットスケープに遅れを取ったことも周知の事実です。
マイクロソフトの歴史を振り返ってみると、同社は時代の最先端を走っている企業ではないことがわかります。
二番手の位置に付けながら、時代の変化を注意深く読み最適なタイミングを捉えて戦略を実行してきた手腕は見事です。
パソコンOSの圧倒的なシェアと資金力、マーケティング力という強みを生かして、成長分野でトップの座を奪い取る、それが同社の基本的な戦略であるといえます。
ビル・ゲイツが情報化社会の行方を正しく見据え、マイクロソフトを巨大企業に成長させた要因としては、ビル・ゲイツの資質だけでなく、同社がソフトウェアを生業とすることが大きいでしょう。
ソフトウェアには、プログラムしだいで何でもできるという柔軟性や、大規模な製造設備を必要としないこと、製品開発に成功すれば限界費用が極めて少ないといった特性があります。
これらソフトウェアの持つ特性は、企業が環境変化に対応して生き残るための大きな鍵となります。
ハードウェアメーカーの多くが、急激な技術革新とコンピュータの利用形態の変化によって淘汰されたことと比べれば、その違いは非常に大きいと思います。
マイクロソフトは、かつてのOSとパッケージソフトウェアの販売から、Azureを中心としたクラウドサービスに軸足を移しました。
執筆当時のビル・ゲイツは、このような変化を予想していたでしょうか。