養老孟司(著)「バカの壁」(新潮新書 2003/04)
養老孟司氏の著作を読む楽しみは、氏の常識にとらわれない思考に触れることにあるといってよいでしょう。
養老氏との対話を書き起こした本であるため、氏の独り言を聞いているような雰囲気も感じられます。
本書には、養老氏の他の著作にも通じる基本的な考え方が随所にみられます。
「結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない」
「もともと問題にはさまざまな解答があり得るのです」
「人生でぶつかる問題に、そもそも正解なんてない。とりあえずの答えがあるだけです」
次の一文も一般常識とは正反対の解釈ですが、本書を読めばその真意がわかると思います。
「人間は日々変化するが、情報は固定化され絶対変化しない」
われわれがいつのまにか作ってしまった「壁」にとらわれずに、自分の頭でよく考えてみることの大切さに気づかされる書です。