自省録

マルクス・アウレーリウス(著),神谷 美恵子(訳)「自省録」 (岩波文庫 2007/02)

アウレーリウス(121‐180)は、古代ローマ五賢帝時代(96-180)の最後を締めくくる皇帝で、ストア派の哲人としても歴史に名を残した人物です。

本書は、アウレーリウスがまさに自省のために書きためたもので、古来多くの人に読まれ多大な影響を及ぼしてきました。

200ページほどのなかに、人間も宇宙の一部であるというストア学派を基本とした世界観、人生観、死生観が展開されています。

また、「公益」に資する生き方が強調されているのは、五賢帝の面目躍如といったところです。

「今こそ自覚しなくてはならない、君がいかなる宇宙の一部分であるか、その宇宙のいかなる支配者の放射物であるかということを。そして君には一定の時の制限が加えられており、その時を用いて心に光明をとり入れないなら、時は過ぎ去り、君も過ぎ去り、機会は二度と再び君のものとならないであろうことを」(第2章 4)

「ほかのものは全部投げ捨ててただこれら少数のことを守れ。それと同時に記憶せよ、各人はただ現在、この一瞬間にすぎない現在のみを生きるのだということを」(第3巻 10)

「あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ」(第4章 17)

「君の肉体がこの人生にへこたれないのに、魂のほうが先にへこたれるとは恥ずかしいことだ」(第6巻 29)

一文一句が、圧倒的な説得力を持って迫ってきます。

人生論は、これ一冊を読めば事足りるといって良いかもしれません。

(2008年6月11日)