養老孟子(著)「半分生きて、半分死んでる」(PHP新書 – 2018)
雑誌に連載された時評をまとめたもので、話題は社会・経済・政治・軍事から人工知能まで多岐にわたるが、森羅万象を解剖するかのような独自の視点は、以前の著作から一貫している。
「頭の中はすぐに煮詰まる。意識は煮詰まるものなのである。」
人口減少と高齢化という問題についても、煮詰まった結果だという。
「宇宙を考えるなら、自分を地球の一部分として見なくてはいけない。その意味では環境なんてない。自分と環境のあいだに切れ目はないからである。」
脳が作り上げた「ああすれば、こうなる」という社会、情報過多で刺激と反応が限界に差し掛かっている社会には基本的な問題がある、という指摘には納得させられるものがある。
「人の性質の多くをノイズと見なし、そうでない部分を情報として処理する。そういう世界に、現実の人間としての未来はない。」
結語は、「自分の生き方くらい、自分で考えたらいかが。」