大河の一滴

五木寛之(著) (幻冬舎文庫 1999年)

発行は20年以上前だが、今読んでも心に深い共鳴を呼び起こす本である。
本のタイトルともなった冒頭の「人はみな大河の一滴」の章に、五木氏が語りたいことが凝縮されている。

五木氏は、混迷を深め、悲惨な出来事に満ち、「心が萎える」ような社会の実相を「生老病死の苦に満ちた生」と観じ、「究極のマイナス思考から出発する」ことで全てを受け入れる。

そして、苦のなかで垣間見せる人の優しさや自然の素晴らしさのなかに、生きる意味を見いだせるのではないかと問いかけている。

「人はみな大河の一滴」・・・人はだれでも、一滴の水となり、川を下り、海に注ぎ、やがて雲となってまた地上に降り注ぐという大きな循環のなかにある。


そう考えれば、苦に満ちた生にも幸福なときを見出すことができるという。