はてしない物語

ミヒャエル・エンデ(著) 上田 真而子 訳 , 佐藤 真理子 訳 岩波書店

冴えない10才の本好きな少年バスチアンが、古本屋で目にした本を持ち出し、読み進めるうちに物語のなかに入り込んでしまう。そこから始まる壮大な物語で、「モモ」と並ぶエンデの代表作である。

物語のなかの主人公アトレーユは、いわばバスチアンの理想像であり、様々な困難に満ちた旅を生き抜いて成長し、やがて世界に迫りくる「虚無」に立ち向かう。

何度も舞台が転換し、荒野を馬で疾走し、渓谷や深い森を通り抜け、そこで様々な架空の生き物と遭遇するが、その発想の幅広さ、スケールの大きさに圧倒される。

古老の持っていた書物のなかに、主人公の身に起きた出来事が記されており、それを自分が読んでいて・・・というように、物語は重層化され、時間と空間を自由に行き来し、やがて見事に収斂する。

バスチアンは元の世界に戻り、はてしないと思われた物語は現実世界では一昼夜に過ぎず、古本屋の主人はそのあらましを知っていた。
ぎこちなかったバスチアンと父親との関係も変わってゆく。

この作品を元にした映画(ネバーエンディング・ストーリー)も作られたが、全く別ものと言っていい。

書店ではファンタジーや児童書に分類されているが、年齢を問わず誰でも引き込まれる魅力を持った作品である。