森本哲郎(著) 「旅物語」 (講談社 1988年)
森本哲郎の20年にわたる旅行記を、著者本人がラジオ放送で朗読し、思い出や感慨を付け加えて出来上がった本である。
「文明の旅」や「二十世紀を歩く」など、はじめはジャーナリストとして、その後は作家・評論家として数々の旅行記を著している著者であるが、この人ならではの視点と文章の雰囲気は一貫している。
旅先は、メソポタミア、アテネ、バクダードなど、古代文明の発祥地や歴史上の舞台が多い。
様々な人々と出会い、そこで起きた出来事や当時の人々の生活と、現在の姿を重ね合わせ、変わったもの・ことと、変わらないもの・ことに思いをはせ、時間と空間の制約を超えた、自由な思索が展開される。
自然の情景や雰囲気を伝える表現もすばらしく、添えられた写真にも味わいがある。