養老孟司(著) (だいわ文庫 2023年)
2006年にとして発刊された「まともバカ ― 目は脳の出店」の復刻版で、講演録を元に書き起こされたものである。
「バカの壁」「死の壁」など、その後続々と発刊された壁シリーズの原点ともいえる思想が展開されている。
「唯脳論」、「涼しい脳味噌」、「養老孟司の大言論」などの書き下ろしで味わえる独自の文体、行間を読む必要のある論理の飛躍といった特徴は少ない。
一方で、最近の著作に比べると、切れ味は鋭く、講演集ということもあってか、遠慮や忖度が少ないように感じる。
逆説からの問題提起や、脳が作り上げた社会が自然といかに折り合っていくべきかといった視点は一貫している。