ゲーテとの対話

エッカーマン(著) 山下 肇(訳) (全三冊 岩波文庫)

晩年のゲーテに師事したエッカーマンが、日々の出来事や詩作と芸術、人生について語り合ったことを丹念に綴った書。

万能の天才とも表されるゲーテ、その活動は、詩人として、科学者として、またワイマール国の官僚として多岐にわたる。

ゲーテの生きた時代は、フランス革命からナポレオン戦争へ、ドイツ連邦の成立など、ヨーロッパ激動の時代であった。

その生涯の蓄積が豊かな言葉となって語られ、「ゲーテ格言集(岩波文庫)」のなかにも本書からの出典が数多く収められている。

「後退と解体の過程にある時代というものはすべていつも主観的なものだ。
が、逆に、前進しつつある時代はつねに客観的な方向を目指している。
現代はどう見ても後退の時代だ。というのも、現代は主観的だからさ。(1826年1月29日)」

「もし世界というものが、これほど単純でなかったなら、いつまでも存在することは不可能だろうね。
この貧弱な土地は、もう数千年前も前から耕されてきているわけだが、地力はいつでも同じなのだ。
ほんの少し雨が降り、ほんの少し日があたれば、春を迎えるたびに緑が萌える。
そしてそれがずっとつづいて行くのだ。(1827年4月11日)」

これらの言葉は、現代にも通ずる普遍性をもっている。

「いつかは目標に通じる歩みを一歩一歩と運んでいくのでは足りない。その一歩一歩が目標なのだし、一歩そのものが価値あるものでなければならないよ。(1823年9月18日)」

「人は、青春の過ちを老年に持ちこんではならない。老年には老年自身の欠点があるのだから。(1824年8月16日)」

「本当に他人の心を動かそうと思うなら、決して非難したりしてはいけない。まちがったことなど気にかけず、どこまでも良いことだけを行うようにすればいい。大事なのは、破壊することではなくて、人間が純粋な喜びを覚えるようなものを建設することだからだ。(1825年2月24日)」

ゲーテに対して晩年という言葉はふさわしくないかもしれない。

ゲーテの陰に隠れてはいるが、冒頭で語られるエッカーマンの半生や、ゲーテとの出会い、その言葉をどう聞き、どう受け止め、自身の人生の糧にしたのかも興味深い。

エッカーマンの筆により、ゲーテが目の前で語りかけているように感じられる書である。

ゲーテとの対話 全3冊セット – 岩波書店 (iwanami.co.jp)