なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた

養老孟司(著) 鵜飼哲夫(聞き手) (中央公論新社 2023年)

読売新聞に連載された「時代の証言者」に、インタビューを加筆増補して生まれた書。

養老孟司氏の日常やこれまでの人生は、NHKテレビ「まいにち 養老先生、ときどき まる」などで断片的に紹介されることはあったが、自伝的にまとめられたのは初めてである。

今まで語られることの少なかった生い立ちから、戦時中、医学生時代、最近の著書まで、何を考え・どう生きてきたか、独特の語り口で伝わってくる文章となっている。

「なんだか知らないけれど、常に一生懸命だった。だれに頼まれたわけでもないのだから、ご苦労様というしかない。」(まえがき より)

都市は脳が自然を徹底的に排除してできあがったもの、話せばわかるなんてウソ、個性とはからだのこと、など、世間の常識に問いを投げかける思想が、どのようにして生まれてきたのかが窺われる。多くの著書のテーマや内容を思い起こしながら読むと興味深い。

「三段跳びのように」話が唐突に飛躍するのも養老孟司氏の特徴であるが、その思想の背景には、ひとつのことを徹底的に突き詰めないと気が済まないという気質があることもわかる。

できれば、養老孟司氏が書き下ろした自伝も読んでみたいものである。

https://www.chuko.co.jp/tanko/2023/11/005712.html