「人生、こんなはずじゃなかった」の嘆き

加藤諦三(著) (幻冬舎新書 2023)

学生時代によく読んでいた加藤諦三氏の近著が目にとまり、何十年ぶりに買った。
ご健在で何よりである。

「60歳を過ぎて、可愛いリュックサックをしょって街を歩く、それが嬉しくてしょうがない。
それが成功した「老い」である。」
(まえがき より)

前半では、理想的な生き方として、「我が人生に悔いなし」と言った祖父の思い出が語られる。

そして、「人生、こんなはずじゃなかった」という生き方になってしまう原因、―自分の意思を持つという成長と苦しみから逃げること― が、繰り返し述べられている。

「失敗のない人生は崩壊した人生である。失敗は、意味ある人生を送るための必要条件である。」
(第一部「我が人生に悔いなし」と言って死ねますか より)

後半では、「人生に悔いなし」と言えるための生き方、特に老年の心の持ち方が語られている。

「内的成熟の時期に入ったら、人からの称賛を目的とした生き方をしないことである。そして内面の成熟を目的とした生き方をすることである。
 それは今まで戦ってきた自分を信じることである。ここまで頑張ったのだから明日は「きっといいことがある」と信じること。」
(第二部 老いを認められる人は若い より)

厳しい記述や、身につまされる指摘も多いが、納得させられる。

あとがきでは、

「今をきちんと生きていれば、運は必ず良くなる」

とのこと。

学生時代、加藤諦三氏の講義を受けたが、当時から人気教授で、大教室で300人ほどが聴講していた。期末試験は「自明性の間主観性について述べよ」であったと思う。懐かしい。

https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344987128/