宇野直人(著) 江原正士(著) (平凡社 2009)
中国を代表するふたりの詩人、李白と杜甫の人生をたどりながら、作品を対談形式で読み解いたもの。漢詩を味読しながら、伝記としても楽しく読み進めることが出来る。
「李白 巨大なる野放図」と「杜甫 偉大なる憂鬱」の2冊が刊行されているが、両著を読み比べると面白い。
表紙に描かれた肖像画からも、二人の人柄や作風の違いが窺われる。
よく言われるように、豪放な李白に対し、哀切を帯びるのが杜甫である。
黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る 李白
故人 西のかた黄鶴楼を辞し
煙火 三月 揚州に下る
孤帆の遠影 碧空に尽き
唯だ 見る 長江の天際に流るるを
絶句 其の二 杜甫
江碧にして 鳥逾白く
山青くして 花然えんと欲す
今春 看すみす又過ぐ
何れの日か 是れ期年ならん
ふたりの代表的な詩であるが、いずれも鮮烈な光景が目に浮かぶ。
李白の詩がはるか天空に上るかのように結するのに対し、杜甫の詩は美しい春を前にしながらも嘆息で結ばれる。
国を思い、士官を求めてほぼ唐の全土を巡り歩き、安史の乱に翻弄されたながら生きたふたりであったが、それゆえにこれだけの詩を残せたのであろうか。