アルビン・トフラー(著),徳岡 孝夫 (訳)「第三の波」 (中公文庫)
社会の構造的変化をダイナミックに捉え、その本質に迫る筆致を得意とするアルビン・トフラー(1928 – )の代表作です。
単行本は1980年の出版ですから、パソコンもインターネットも普及する前の時代です。トフラーの未来予測はどの程度当たったのでしょうか。
トフラーは時代の変革を「波」の概念でとらえ、第一の波は「農業革命」、第二の波は「産業革命」、そして第三の波は「脱産業化」と分類しています。
本書が執筆された当時は、ちょうど第二の波の社会(煙突型産業による大量生産・大量流通・都市の成立・規格化・同時化)から、第三の波の社会への移行期にあり、この変革は歴史上最大のものであると指摘しています。
このような時代変革の影響は、産業・生活・文化芸術など多方面に及びます。
例えば、第二の波の社会の到来によって、多くの聴衆を一ヶ所に集めて音楽を興行する必要が生じたために、大音量のオーケストラが考案されたというように、芸術さえも変革の影響から免れることはできないわけです。
そして、第三の波への移行ではさらに大規模で広範な変化が起こり、波頭がぶつかって砕けるように、旧勢力と新勢力の衝突や混乱が生じていると捉えています。
トフラーが予測した変革の多くは、現実のものとなっています。
「特別な教育を受けた専門家の手を必要としない安くて小型のコンピューターは、やがてタイプライターのように、どこにでも見られる存在になるであろう。」(第14章情報に満ちた環境 より)
またトフラーは、「マス・カスタマイゼーション」や、「生産=消費者(プロシューマー:Producer+Consumer)」という造語を用いて、消費者が製品の企画段階から参加するような、新しい産業の姿を予測していました。
トフラーの描いた未来の多くは現実のものとなりました。
その一方で、トフラーの予測を超えて進行したものもあります。その代表はインターネットでしょう。
WWW(World Wide Web)が登場するのは、「第三の波」から12年後の1992年です。
(2007年11月30日)