森本 哲郎 (著)「生き方の研究」(PHP文庫)
古今東西の先人の生き方をたどることにより、生き方について深く考えるように促してくれる本です。
本書(PHP文庫)は、新潮選書として「正」(1987年)と「続」(1989年)が刊行されたものを、1冊にまとめ文庫化したものです。
登場するのは、古代ローマ時代のセネカに始まり、陶淵明、与謝蕪村、カント、兼好法師、シュリーマン、アインシュタイン、正岡子規、老子、小野小町、キケロ、石川啄木、白楽天、北斎、孔子など、39人に及びます。実在の人物だけでなく、ロビンソン・クルーソーや坊ちゃんなど、小説の主人公も登場します。
本書の特徴は、「かく生きるべし」という規範的な偉人伝に終わっていないことです。
各章には「人生の短さについて-セネカ」、「よき晩年について-王安石」というようにさまざまなテーマが設けられています。
最初に著者から問題提起がなされ、読み進むうちに著者とともに考えるよう促され、そこに先人が生きた事例として登場するという絶妙の構成になっています。
著者は、カントの三批判書(*1)に挑戦した学生時代や、シュリーマンの発掘の舞台を訪れたときの体験などを思い起こしながら、深く思索を巡らし、「生き方の研究」を展開しています。
血の通った人生論であり、充実した読後感が得られる良書です。
(2007年11月28日)