人間ゲーテ

小栗 浩(著)「人間ゲーテ」(岩波新書)

長年のゲーテ研究の成果として、「人間」としてのゲーテの姿に迫った興味深い著作です。ゲーテの生涯を、様々な作品や女性との関わりを通して活写しています。

著者の言葉を借りれば、「ゲーテが、十八世紀という時代のなかで育まれ、戦い、そして時には妥協しながら、いかに生きるべきかに工夫をこらしていった姿を、私なりに掘り出してみたい」という狙いで書かれたものです。

第一章では、万能の天才と評されるゲーテのような人間が、複雑化・細分化した現代においても存在しうるのかという問題提起がなされます。

第二章では、ゲーテの受けた教育と人格形成の背景や、ゲーテを語る際に忘れてならない様々な女性との恋愛が解説されています。
ファウストの「永遠の女性が我らを引いてゆく」という文章が有名ですが、ゲーテは74歳になっても、17歳の少女に恋をしたという心の若い人物でした。

第三章以降では、官吏でもあったゲーテが革命の時代をいかに生きたのかを紹介し、またファウストなどの代表作を紹介しながら詩人としてのゲーテの魅力を分析しています。

(2007年12月27日)