キケロ ー(著),中務哲郎(訳)「老年について」 (岩波文庫 2004/01)
古代ローマ時代の学者・政治家・弁論家キケロー(前106―前43)が、二人の若者を前にして語るという想定で書かれた対話編です。
老年が惨めなもの思われる理由として、老年は(1)公の活動から遠ざけること、(2)肉体を弱くすること、(3)ほとんど全ての快楽を奪い去ること、(4)死から遠く離れていない、をあげて、これらの理由が本当かどうか検証するという構成で対話が進みます。
キケローの言葉には、自信が満ちあふれています。
「幸せな善き人生を送るための手だてを何ひとつ持たぬ者にとっては、一生はどこを取っても重いが、自分で自分の中から善きものを残らず探し出す人には、自然の掟がもたらすものは、一つとして災いと見えるわけがない」(p13)。
「老年を守るに最もふさわしい武器は、諸々の徳を身につけ実践することだ。生涯にわたって徳が洒養されたなら、長く深く生きた暁に、驚くべき果実をもたらしてくれる。徳は、その人の末期においてさえ、その人を捨てて去ることはないばかりか・・・人生を善く生きたという意識と、多くのことを徳をもって行ったという思い出ほど喜ばしいことはないのだから」(p17)。
「束の間の人生も善く生き気高く生きるためには十分に長いのだ」(p66)
ではどうすればこのような輝かしい老年期を迎えることができるのでしょうか。
「熱意と勤勉が持続しさえすれば、老人にも知力はとどまる」(p27)。
「わしがこの談話全体をとおして褒めているのは、青年期の基礎の上に打ち建てられた老年だということだ」(p61)
幸せな老年はひとりでにやってくるわけではなく、青年期からの生き方によって決まるということです。
若い世代にこそ読んでほしい本です。
(2008年6月10日)